マンションをめぐる組織運営の経験談から学ぶーーマンション理事経験者のみなさんを迎えて<U-School vol.6>


26歳以下の世代がマンションにおいて、日本における将来の社会課題を解決するソリューションとなるコミュニティをつくりだしていくことを目的に活動している三井不動産レジデンシャルのCSV活動「U26」プロジェクト。

今年度は、定期的にゲストを招いて話を聞く「U-School」を開催。U26メンバーは、パークシティ溝の口でコミュニティカフェを実現するために、様々な知識や情報に触れています。

今回のU-Schoolでは、マンション理事を経験された方々をお招きして、みなさんのご活動について講演とパネルディスカッション形式でお話を伺いました。

「マンション理事会」について

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マンションにおける共用施設の運営をはじめさまざまな事柄は、その区分の居住者にて構成されるマンション管理組合によって決議・運営されています。管理組合は理事会によって執行がなされ、年に1回の総会にて意思決定がされます。

理事会も、その区分の居住者の中から選任されたメンバーによって構成され、マンションごとに管理規約によって構成や運営方法、決議方法などが定められています。

マンション管理全般、そしてコミュニティづくりに重要なマンションの理事会は、どのように運営されているのでしょうか。

今回のU-Schoolでは、お招きしたゲストにマンション理事としてのご経験と、そのなかで得た気づきについてお話いただきました。

管理組合から独立した任意団体でコミュニティを運営

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まずは『Brilia Grande みなとみらい』にて、「ブリリアみらいコミュニティ」を推進する松本道雄さんのお話から。

『Brilia Grande みなとみらい』は、築年数8年、総世帯数:555世帯、未就学〜小学生のお子さんを持つ子育て世代が居住者に多いマンション。任意団体「ブリリアみらいコミュニティ」が、コミュニティ運営を担っています。

「ブリリアみらいコミュニティ」で会長を務める松本さんは、建築設計のご出身。仕事での経験を地域で生かせればという思いから、マンションに隣接した講演での活動をきっかけに、2009年からみなとみらいや横浜市の地域まちづくりに関わってこられたそうです。

松本さんは、管理組合の理事長や副理事長を6年間務めながら、各種専門委員会の運営や立ち上げにも関わってきました。その中で、猫や犬などペットを中心としたコミュニティづくりの取り組みを実施したり、防災を軸にしたコミュニティづくりを行ってきました。

2016年からは、よりコミュニティづくりに専念して取り組むべく、管理組合から独立した任意団体「ブリリアみらいコミュニティ」を設立。住民同士の支え合いの繋がりによる小さな社会をつくることを目指して、活動されています。

「管理組合として活動する上で、参加した方の率直な声に耳を傾けることが重要だと考えるようになりました。「ブリリアみらいコミュニティ」は、管理組合が建物の住まいを守るのに対して、居住者の暮らしを豊かにしていくことに焦点を当てています」

設立当初、管理組合との違いがわからない居住者も多く、「ブリリアみらいコミュニティ」に実際加入した人は全体の8%ほど。現在、松本さんは少しずつ、居住者の方々に「ブリリアみらいコミュニティ」の趣旨を説明していっている段階。今後は、マンションの中で活動していく上で不可欠である管理組合の協力を得ながら、活動を続けていくそうです。

小さなコミュニティがたくさん生まれるように管理する

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続いて登場した岸本伸幸さんは、松本さんと同じくみなとみらいにあるマンション『MMタワーズ フォレシス』の管理組合の理事会に参加されています。『MMタワーズ フォレシス』は、築年数8年、総世帯数は1,206世帯、各年代ともほぼ同数、その中で子どもの数が年々増加しているマンションです。

岸本さんは、管理組合で三期理事会運営に関わった後、自治会を設立。自治会長を務めていました。その後、自治会を管理組合に統合することになり、委員会組織という形で管理組合に統合。統合後は、委員会の代表を務めており、自治会から引き続いてコミュニティ活動の責任者をされています。

『MMタワーズ フォレシス』では、管理組合がコミュニティ活動も実施しています。それは、管理組合の目的であるマンションの資産価値を維持向上させることにつなげるため。管理組合が、ハード面の管理だけではなく、居住者同士の人間関係というソフト面も管理することで、マンションの資産価値を向上させていこうとしています。

「マンションには、大勢の居住者が暮らし、非常に多様な価値観があります。これを一つにまとめるのは限界がある。そこで、私たちは共通の価値観を持つ人が集まり、小さいコミュニティがたくさんできるだけでも十分だと思っています。そして、小さいコミュニティが活動しやすい環境を作ることが、私たち役員の仕事です」

岸本さんは「あくまで機会のみを提供して、居住者のみなさんで繋がっていってもらう。そうすることで、いざというときに助け合えるような、顔見知りの人間関係が築かれていく」とマンションにおけるコミュニティ活動で大切にされていることを語りました。

今後は、コミュニティの輪をマンション内に留めず、みなとみらい地域へと広げていくことを目標としているそうです。

仕組みを作ることがコミュニティ活動の持続の秘訣

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続いて登壇されたのは、芝浦アイランド自治会顧問の小西貴彦さん。『芝浦アイランド』は、分譲棟2棟、賃貸棟2棟で構成される築年数10年、総世帯数約3,800世帯、30〜50歳代のファミリー層が多く暮らす、入居者数は1万人を超える小さな街のようなマンションです。

『芝浦アイランド』では分譲棟は管理組合が、賃貸棟は管理会社が管理しており、マンション全体のコミュニティ活動は自治会が運営しています。

「例えて言うなら、「点」は管理組合、「面」は自治会と分けて活動しています。この方法の利点は、例えばマンションが4棟あってそれぞれの棟で防災に関する備蓄が異なっているのを、自治会が中間に入って互いに補完する機能を持たせられること。そのため、自治会の存在は非常に重要視されています」

小西さんが自治会で実施されているのが、本の交換会や本を使ったいろいろなイベントを通じて多世代の人たちの交流を図る活動です。同じマンションで気軽に参加できる交流会を開催したいと考えた小西さんが、マンション内で本を提供する交換会を始めたことが始まりです。

「実際にやるとなると、マンション内の交流イベントは継続するのが困難です。イベントは、お金がかかりすぎることが問題となります。そこで、本のイベントでは収入構造を考えました。本は居住者のみなさんから持ち込んでいただき、最終的には古本回収業者に買い取ってもらいます。買取金を使って、マンションの共有スペースの本を揃えるなど循環するモデルを考えました。ブックカフェも同時に開催して、参加者から一部お茶代をいただくようにするなど、構造を作りました」

小西さんは、活動を継続するためのポイントとして、「身近な話題を」「誰もが参加しやすい内容と仕組」「簡単な運営方法」「コストのかからない方法」「社会貢献に繋がる」の5つを挙げました。

そして、「積極的に声をかける」「どんな企画でもまずはほめる」「良い企画は手伝う」「その人を主役にする」「ともに喜ぶ」の5つを人を巻き込むためのポイントとして紹介されました。

近隣マンションとも連携した活動を

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最後に登壇されたのは、U26メンバーが今年度コミュニティカフェを立ち上げるために活動している『パークシティ溝の口』で理事を務めてらっしゃった山本美賢さん。『パークシティ溝の口』は、築34年のヴィンテージなマンション。14階建ての高層棟が5棟、4階建ての低層棟が7棟ある、敷地の広い場所となっています。

山本さんがお話されたのは、最近進み始めているというパークシティ溝の口と近隣マンションとの連携について。

「近隣マンションそれぞれが、課題を抱えていることがわかりました。課題を理解し、補完し合うと弱みが強みに変わる。『パークシティ溝の口』は高齢化が進んでいるので、高齢化のための対策のノウハウを持っている、築34年なので修繕委員会が20年活動しており、修繕に対する知見もある。他のマンションは新しくて子育て世代が多く、お母さんたちのLINE連絡網がすごい。町内会との連携が強いところもある。強みを持ち寄ることで、助けられたことが多々ありました」

近隣マンション同士でさらに連携していこうと、防災に関する催しを開催。このイベントには、U26メンバーも参加してきました。

関連記事:溝の口の3つのマンションが合同で開催したご近所マンションイベント「炊き出しフェス」に参加してきました!

楽しく、防災についての知識が身につき、近隣のマンションとの交流も深まる。そんなイベントになったそうです。

「実行委員に、元理事会、元自治会の人もいたんですが、基本的に居住者が実行委員のメンバーでした。居住者の発案としてイベントを開催できたことは良かったですね。子育て世代、現役世代、シニア世代が、それぞれの持ち味を発揮しながら活躍できたことも素晴らしかったと思います」

最後に、山本さんは今後作っていく予定のコミュニティカフェについて触れ、プレゼンを終えました。

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U26では、マンションの共用施設の有効活用と一人暮らしのシニア世代から子育てファミリー世代まで幅広い世代の居住者間でのコミュニケーションを促すために、多世代に優しいコミュニティカフェを作ることを目指しています。

今回、マンション内でコミュニティ活動に関わってこられた理事の方々のお話を伺ったことで、U26メンバーも分譲マンションにおけるコミュニティ活動を続けることの大変さと価値観の異なる居住者との合意形成の難しさと重要性をより強く認識したはず。

今後のコミュニティカフェを作っていくための動きが楽しみです。

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