Neighbors Next U26 Project 2015 第2回となる説明会開催!


先日2月11日、
第2回Neighbors Next U26 Project説明会が行われました。今回も20人以上の参加をいただきました。
ありがとうございました。

 

遅くなりましたが、説明会の様子をお伝えします!

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■「小さな経済」~ゲストスピーカー仲 俊治さんのお話~

ゲストとしてお招きした仲さんのお話は、住宅における発明、というテーマから始まりました。

 

〜仲俊治さん プロフィール〜

1976年京都府生まれ。1999年東京大学工学部建築学科卒業。2001年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。2001年~08年山本理顕設計工場。2009年建築設計モノブモン設立。2012年仲建築設計スタジオに改組。2009~11年横浜国立大学Y-GSA設計助手。現在、横浜国立大学非常勤講師、明治大学非常勤講師。
建築プログラムと環境の観点から、
新しい生活環境のデザインを手がけている。
主な受賞歴に、グッドデザイン賞2014金賞、第1回LIXILデザインコンテスト銅賞、第11回長野県建築文化賞優秀賞、第44回中部建築賞金賞等。
事務所URL:http://www.nakastudio.com/

 

住宅に関する発明では、19世紀の産業革命を契機として生まれた専用住宅があります。当時のロンドンは工場が多く立ち並び、それにより環境の悪化が進行し、その結果、人が住むための「住宅」と、仕事をするための「まち」が分離していました。

 

それにより生まれたのが「田園都市」と「集合住宅」という2つの住環境の発明であり、そこからまちへと向かうために「通勤」というスタイルが発明されました。そこから現代まで続いた専用住宅のかたちですが、「住むためだけの機能しかない旧来の住居のスタイルではつながりは生まれにくい」と仲さんは指摘します。

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続いて、話題は「現代の都市でのつながり」に移ります。単身世帯が増え、家庭が担っていた役割も誰かが担う必要のある現代の都市で、つながりを生むにはどうすればよいのでしょうか。

 

一つは他人との生活の共有である「シェア」。
もう一つが、仲さんが提案する「小さな経済」です。

 

「小さな経済」とは個人個人の仕事や生業に加えて、趣味や特技を他の人と共有交換するという身近な相互扶助の新しい形を指します。それを住宅に取り入れ、Give & Takeが連鎖するような住まいを、仲さんは提案されています。

 

その事例として、仲さんが手がけた「食堂付きアパート」についてご紹介いただきました。SOHO住戸、食堂、シェアオフィスの3つの機能を組み合わせたことで複数の中間領域が生まれ、まちから個室までがゆるやかにつながる場になっています。

食堂付きアパート
参照:仲建築設計スタジオ

 

また、ハード面だけではなく、仕組みに関してもデザインがなされています。
例えば、食堂にいつもいるシェフが道路に面した食堂の外まで掃除をしてもらうことで、衛生状態を保てるだけではなく、声がけ自体がコミュニケーションになり、結果として集客にもつながります。

 

また、食堂が空いている時間には、おしゃれな打ち合わせスペースとしても住人は利用できるため、キッチン、冷蔵庫を小さくでき、住居のスペースを広くもつことができます。

 

こういった仕掛けがちりばめられた、新しいスタイルの住居です。

 

 

■U26世代が求める「つながり方」~参加者によるグループワークで出た意見~

 

仲さんのお話を聞いた後は、説明会参加者がグループごとで話し合い。仲さんのお話や、暮らし方全般について気になっていることを意見交換しました。

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いろんな意見や考え方を共有することで、26歳以下の若者の「住まい」への興味・関心が見えてきます。

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グループで出た意見や質問について発表した際には、仲さんにもコメントしていただきました。以下はその時の概要です。

 

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参加者①
Give & Takeの連鎖が重要ということですが、自分でgiveできるものがない場合はどうしたら良いでしょうか?

 

仲さん
Give & Takeの敷居を下げたら良いのでは。最初はちょっとしたお手伝いから始まっても良いと思う。

 

参加者②
今の若者はネット上のつながりがあるので、リアルな場面でつながることに対して抵抗が無い気がする。

 

仲さん
そうなると、ネット上にある近さがどんな時に物理的に必要になるのかを考える必要がある。つながりたい時につながれるようにするにはどうすれば良いのか、考えられると良いですよね。

 

参加者③
「つながり」という部分が強調されていたが、つながりたい人だけじゃないと思う。そういった人に対してはどんな配慮が必要でしょうか?

 

仲さん
つながるのを強制するのは難しいので、つながり方を選ぶことができるだけで違うのでは。

 

参加者④
都市の暮らし方についてグループで話が展開されたが、やはり地方についても気になりました。どのあたりが違うのでしょうか。

 

仲さん
地方では将来的にやりたいことから逆算する必要がある。そこに住む人の考え方からデザインしなくてはいけないと思う。

 

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都市の集合住宅でもコミュニティ形成のニーズは高まっていますが、今回のこの議論でも出たように、ただつながるだけではなく、どのようにつながるのかも、これからのコミュニティづくりには重要になってくるのではないでしょうか。

 

■最後に

 

ゲストの仲さんはお話の最後で、考え方の発端となったベトナムでの出来事を話してくださいました。

 

以前仲さんがベトナムで食事をしていたところ、お母さんと子供がお店に野菜を持ってやってきた。その母娘に話を聞くと「ガスが使えるところがお店しかない。お店を使わなくなった時間から、使わせてもらっている」と答えたそうです。

 

こうした柔軟なコミュニケーションが生活を豊かにし、閉じた住宅が集まった劣化版「専用住宅」の群れだったものが、「小さな経済」を考えていくことで、人と自然に開かれたまちが生まれていく。

 

仲さんの提案する暮らし方には、これからの都市のライフスタイルを考えるU26プロジェクトにとって、非常におもしろいヒントが詰まっていました。多分野にまたがるメンバーが集まり、プロジェクトのこれからがとても楽しみに思えた一日でした!