三井不動産レジデンシャルのCSV活動の一環としてスタートした「U26」プロジェクト。26歳以下の世代がマンションにおいて、将来の日本の社会課題を解決するソリューションとなるコミュニティをつくりだしていくことを目的に活動しています。
今年度の第3回目の活動では、WAT代表の石渡康嗣さんをお迎えし、人が集まるカフェの仕組みづくりについてお話を伺いました。レポート後編では、トークセッションの内容とメンバーとのやり取りの一部をご紹介します。(前編はこちら)
「カフェ」はオワコンか?
「カフェ」っていうのはもうオワコンじゃないかって思っています。そもそも僕は古い世代の人間なんで、「カフェ」っていうものに対して幻想を抱いているんですね。
スタッフはかっこよくあるべきだ、音楽もキレキレ、飯もお酒も最高においしい、朝から晩までやっている、そんな店が近所にあるといいよね、と。20年前はそれが成り立っていました。「Lotus」や「Bowery Kitchen」といった化けものみたいに楽しかったカフェがあり、僕らはその背中を追ってました。
かつてのようなカフェのスタイルで、かつてのような栄光はもう難しいなぁと考えています。
業態は専門化が進み、オペレーションは標準化されていきます。経営者は経営の安定と引き換えに、スタッフに難しい要求をしなくなりました。その上、スタッフの収入面での環境もよくはないです。そんな中で人を育てて、一人前にしていくのはとても難しいです。
よほど志の高い人でないと、カフェのかではやっていけない。色々考えてくると、我々が考えている広いスペースでコミュニティもできる場所があって、みたいな「カフェ」は、僕はもうオワコンだと思ってます。
特定少数の人が目的をもって来てくれる場所に
僕がコンマやポー、アワーズに活路を見出しているのは、不特定多数の店前通行量の人達を相手にするのではななく、特定できる少数の人が目的をもって来てくれるという点です。
店舗用の物件についても、例えばコンマコーヒーは地域に一棟だけ残された団地でした。リノベーションして「ひばりテラス118」となって、コンマが成り立っているんですね。都心で面白い物件を見つけるのはとても大変ですが、ちょっと郊外にいくと結構発掘されます。

ひばりテラス118内にあるComma,Coffee(コンマ コーヒー)
都心でカフェをやろうとすると、アルバイトがすぐ辞めちゃうんですよね。多くのアルバイトさんでまんべんなく回すために、だれがやってもブレのない、ボタン一個で済むようなオペレーションにせざるを得ない。
そんなおもしろみのないことをやるくらいだったら、一人か二人で出来るオペレーションで、その人の個性で表現できる素晴らしいものを提供したがなんぼか合理的。その地域に安定的に暮らしたい人を社員化したほうがなんぼか良い。
そう考えると、大量に流通して大量消費しているものよりも、地域で生産して地域で流通しているもので、地域にいる人に消費してもらうってほうがなんぼかリーズナブルじゃないかなと。
つまり都心で僕が思い描いていたようなカフェはもう成り立たないけれども、地域においては、このピースが上手くはまれば、出来る可能性があるんじゃないかな、って。
でも勘違いしないでくださいね、絶対儲からないけど自分がやりがいを持って働いてやれる分ぐらいはあるんじゃないかなという考えです。
今の時代に「コミュニティカフェ」をやるためにカフェが編集すべき情報を考える
そもそもコーヒー1杯=500円とかって誰が決めたんでしょう。飲食する行為を原価から算出するやり方だけが全てでない気がしています。従来的に、提供物一つの対価をいただくことだけがカフェの仕事でないと考えると、同じ仕事をしていたとしても編集次第で成果はまったく違ってくるのではないかと。
こういう模索って、都心でやってるとただただ忙殺され、スタッフのモチベーションもどんどん劣化し、最初何をやりたかったんだっけ?みたいな感じになるんですけど、都心外に行くと何かチャンスがあるんじゃないかなって思っています。
まだ答えにたどり着いていないですが、そんなこと考えながら「コミュニティカフェ」の仕事をやっているっていうのが、今の私です。
質疑応答の時間
質問1:今回はマンションの共用部におけるコミュニティカフェの運営ということで、集合住宅にフィットした店舗の経営になるのですが、ゴールや目標をどこに置くのが良いのでしょうか?
石渡さん:そこに集まる人と、その場所なりの答えになってきますよね。やる人が現場で真剣に考えていくしかないと思います。持続していくためには、大きな損失を出さないことも重要です。大ゴケしないで、小ゴケを繰り返すことでで3、4年続けてやれば、色々と見えてくると思います。
質問2:経済性とコミュニティカフェとしての機能を両立させていくためのポイントはどういったところになるんでしょうか。
石渡さん:ひとつ重要なのは、カフェのオペレーションを回す人とは別に人を使うことです。ちゃんと人が話を聞けたりとか、ワークショップをやる人を設ける。カフェのスタッフの仕事はコーヒーを淹れることで、コーヒーを淹れてるときにワークショップなんかできないのが現実です。ここでもかなり数のイベントをやっていますが、カフェ自体のオペレーションをやりながら、同じスタッフがワークショップも運営するのはサステナブルではありません。
多くの場合、コミュニティカフェをやってほしいと言い始めた主がいるはずです。その主の要求はコーヒーを出すことだけではなく、コミュニティを作ってほしいって言ってることが多いと思います。そこで、クライアントには「コミュニティはただでは生まれません」、ということを理解していただく必要があると思います。
「カフェ」はオワコンなのでは? という疑問を投げかけながら、時代ごとに形を変えながら運営していくコミュニティカフェの可能性、そしてやりがいをお話くださった石渡さん。
このほかにも、カフェを経営するにあたっての実務面のポイントや、マーケティングについてなど、コミュニティカフェを実装していくにあたっての具体的なアドバイスを色々とご教授くださいました。
メンバー一同、コミュニティカフェの理想を描きながら、持続的に事業を運営していくにあたっての経済的な意識、マーケティングや現実的な実務面についての新たな視点を得ることができ、今回のプロジェクトへの意気込みをさらに高める機会となりました。
これからU26はどのような活動を見せていくのでしょうか。今後の展開にも乞うご期待ください。