今年度、U26のメンバーは「パークシティ溝の口」の住民の方々と共同でコミュニティカフェを作るプロジェクトを進行しています。プロジェクトを円滑に進めるためにも重要なのが、パークシティ溝の口の歴史や住民の取組についての理解を深めること。
8月27日(土)、U26のメンバーは「パークシティ溝の口」にて、修繕に関する勉強会を開催。マンション理事会や修繕委員会、地域包括支援センターの丸山様から、色々とお話を伺いました。
今回は、勉強会の様子をレポートします。
建物の老朽化と住民の高齢化の波が押し寄せるマンション
まずは、「パークシティ溝の口 カフェつく会議」の山本美賢さんから勉強会の趣旨を共有。続いて、パークシティ溝の口管理組合の理事長経験者の桜井さんより、大規模修繕の重要性についてのお話がありました。
「最近、パークシティ溝の口は、30歳を超えたマンションの仲間入りしました。今後、古いマンションが各地にどんどん増えていき、老朽化した建物をどうするかは共通する課題です。そして、もう一つの課題が住んでいる人たちの高齢化。建物の老朽化と住人の高齢化という2つの課題に対応していかなければなりません」
国土交通省「マンション総合調査」によると、1980年度には世帯主が60歳代以上の割合は8%だったにも関わらず、2013年度では50%に上昇。住民の入れ替わりが進めば高齢化は歯止めがかかりますが、一度購入したマンションに永住しようとする居住者が多いければ多いほど新陳代謝は起こりにくくなります。
「居住者の高齢化は永住志向の方が多い証拠で、パークシティ溝の口がよいマンションの証。しかし、建物の老朽化と併せて、お年寄りが増えたことへの課題を解決していかないといけません」と桜井さんはコメント。そのためには、マンションは建物とコミュニティのバリューアップに取り組み、資産価値と居住価値を向上させる必要があります。
「建物の価値を向上させるために、大規模修繕計画は重要です。修繕計画をたて、修繕に必要な資金を積み立てていくのが管理組合の役割です」
地域に暮らす高齢者を支える地域包括支援センター
続いて、溝口地域包括支援センターの丸山所長から、地域包括支援センターとは何かについての発表が行われました。
地域包括支援センターは、平成18年に全国にできた高齢者とご家族の公的な相談窓口。各地域のセンターには、保健師や看護師、社会福祉士、主任ケアマネージャーが配置されており、介護予防や日々の暮らしをサポートしています。
丸山さんによれば、地域包括支援センターを直接行政が運営しているケースは少なく、7〜8割は様々な法人に委託をして運営されているそうです。川崎市内だけでも、49箇所の地域包括支援センターが存在しており、それぞれ担当する地域が決まっています。
「私たちは、高齢の方向けの医療や介護、福祉に関するよろず相談所です。ご自宅に訪問して、高齢者の方々の相談にのります。加えて、高齢者の方々の権利を守る活動や要支援1・2と呼ばれる軽い症状の方々に対しては介護予防のサポートを行っています」
個別の支援に加えて、地域包括支援センターとしては専門職のネットワークづくりや民生委員や自治会など地域で活動している人たちのネットワークづくりも行っているそうです。
「個別の支援が基本ではありますが、個別の支援をしていくためには、地域づくりが重要です。地域づくりが個別支援の向上につながります。地域づくりの一環として、高津区内に認知症の方が気楽に集まって話せる「認知症カフェ」を設置するなどの活動をしています」
パークシティ溝の口では「隣愛クラブ」と呼ばれる集いが開かれており、地域包括支援センターとして企画の相談などにのっているそうです。
地域包括支援センターで担当されている3つのエリアの合計で高齢化率が15%を超えており、地域で高齢者をサポートしていく動きが必要になっているようです。
修繕の計画とお金の積立を担当する管理組合
そして最後に発表されたのは、修繕委員会の活動について。矢野さんから管理組合自らが主体的に大規模修繕に関わることについて、お話がありました。
修繕委員会は、2005年7月に排水管改修を検討するために修繕分科会、住棟委員と有志が拡大修繕分科会として活動を開始。2006年4月に理事長の諮問機関として正式に発足したそうです。
パークシティ溝の口で、修繕委員会に届く不具合のある箇所は、修繕に必要な費用が大きなものから小さなものまで毎月20件ほど。
「パークシティ溝の口は、三井不動産との共同運営。敷地内にはイトーヨーカドーもあります。12棟の住居棟があり、駐車場棟もある。これを共同で運営していていますが、共同であるがゆえの工夫も必要です」
と、大規模なマンションを管理・修繕していくポイントについてコメントされていました。大規模修繕では個別に小さく対応していくのではなく、全体を見ながら計画を進めていくことが必要になり、委員会はその役割を担っています。
「戸建てであればインフラは公共サービスがやってくれますが、マンションでは排水管も自分たちで修繕する必要があり、かつ大規模な工事が必要になります。こうした修繕の実行計画は修繕委員会が策定します。」
これまでに修繕委員会は、専有部を含む給水・給湯・排水管の更新、エスカレーターの修繕や節電対策、設備系の改修工事などを実施してきました。
矢野さんと同じく修繕委員会のメンバーを務めている曽根さんは、2010年に行われた「D工事(給水給湯管の更新)」がパークシティ溝の口の特徴を表しているとコメント。
「D工事では、管理会社に任せっきりにするのではなく、修繕委員会が見積もりや発注を行うことで数億円の費用を削減することができました。その分、専有部の修繕も積み立ててあった費用で対応することができました」
修繕委員会が長期的な視点を持って、大規模修繕を計画・実行することで、パークシティ溝の口では他のマンションにはない活動が実現できているようです。
コミュニティカフェに向けたヒアリング
理事会、地域包括支援センター、修繕委員会からの話を聞いた後は、U26メンバーがパークシティ溝の口の方々に向けたヒアリングの時間となりました。コミュニティカフェを作っていくにあたって、どんなニーズがあるのかを住民の方に伺っていきました。
3つのテーブルに分かれ、どんな場所であれば人が集まりそうか、どんな場所があることが望ましいかといったことをヒアリング。最後には、U26のメンバーからヒアリング内容の共有が行われました。
西さんのグループでは、「イベントに利用できる広さがほしい」「食事ができる場所が少ないから食事を充実させる」「子どもに何か教えたい」」ペットを飼っている人も多いのでペットを介した交流はどうか」といった意見が出たようです。
山本さんのグループでは、修繕委員会の会議のように堅くなりがちな話題でも、リラックスした雰囲気でコミュニケーションができるような空間になるといいのでは、といった意見が出ました。
敷地内の空きスペースが有効に活用できていないことについても言及。子どもが遊ぶことができる空間として使うことができないか、など議論が盛り上がったようです。
砂古口さんのグループでは、パークシティ溝の口に暮らしてどう感じているのかをヒアリング。マンション内の交友関係に満足しているか、よく行くカフェはあるか、カフェができたらどう使いたいかといったことを伺っていきました。
小さい単位での交流には満足しているものの、パーク全体での交流では満足はしておらず、パーク内で印象に残っているイベントは「お祭り」だったそうです。
カフェを作ることで居住者にとっての新たな居場所となることができそうですが、カフェにたくさんの人が集まるためのきっかけづくりも大切になりそうですね。
各グループで共通して話題となっていたのは、女性は外に出て交流する一方、男性はなかなか外に足を運ばないこと。こうした点にもコミュニティカフェへのヒントがありそうです。
U26メンバーが関わるパークシティ溝の口でのコミュニティカフェを作るプロジェクトも、少しずつ前進しています。今後も、プロジェクトの様子をお伝えしていきます!